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月刊誌ナイルス・ナイル
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ナイスルナイルはよりよいライフスタイルを提案するカルチャーファッション誌です。
世界的に活躍する日本人画家、彫刻家などのアーティストをピックアップ。
このコラムは2005年12月号より2007年9月号までに連載した記事と現在執筆のもの。
2007.5月号 NO.124 カバーフォト:Masahiro Goda---------発行:ナイルスコミュニケーションズ
[登場アーティスト]
杉本博司(No.107 )
篠原有史男(No.108 )
黒田アキ(No.109)
荒川修作(No.110)
中島由夫(No.111)
安田侃(No.112)
小林孝宣(No.113)
外尾悦郎(No.114)
ジミー大西(No.115)
松山修平(No.116)
草間彌生(No.117)
村上隆(No.118)
森万里子(No.119)
奈良美智(No.120)
川俣正(No.121)
千住博(No.122)
新宮晋(No.123)
リー・ウー・ハン(No.124)
絹谷幸二(No.125)
横尾忠則(No.126)
大竹伸朗(No.128)
ヘルマン・ニッチェ(No.176)

余白の芸術家 ー 李禹煥(リー・ウー・ハン)


 いきなり私ごとで恐縮だが、青をテーマに絵画、アートパフォーマンスの上演などを始めて十数年がたつ。それまでは当時流行していたニュー・ペインティングの影響を受け(日本ではヘタウマブームといった)、さまざまな色や技法をこねくり回し描いていた。それがある日突然、青をテーマにしよう!と思い立つ。それからは青一色の絵画や雲ひとつない空を映した写真を積み木のように立体作品にしたり、透明なチューブに青い水をいれ展示したりする。
 何故、青なのか?それは留学中に体験したエーゲ海の青さやエジプトの砂漠から眺めた青空の感動が忘れられなかったのかもしれない。また青とは宇宙最後の色じゃないか、とも考えたことがある。今の科学は海の青さや青空のことを光の性質で説明できるが、この宇宙空間から星やチリなどすべての物質を除いたら漆黒の闇になるだろうか?いや黒色は存在せず、限りなく闇にちかい“青”ではないか、と思ったのだ。
 李禹煥。韓国生まれでソウル大学校美術大学を中退し56年来日。日大哲学科で学び活動を開始。67年サトウ画廊で初個展。60年代後半、もの派という現代美術の大きなムーブメントの中心的アーティストとして活躍。以降、パリ・ビエンナーレ、カッセル・ドクメンタ出品。デュッセルドルフ・クンストハーレ、パリ・ジュ・ド・ポム美術館、神奈川県立近代美術館、05年横浜トリエンナーレなど世界各地で個展開催。前パリ国立エコール・ド・ボザール招聘教授をつとめ現在、多摩美術大学教授。2001年、第13回世界文化賞受賞。また69年「事物から存在へ」が美術出版社芸術評論募集で入賞。「出会いを求めて」(美術出版)、「余白の芸術」(みすず書房)なども出版、美術評論にも定評がある。
 ところで李氏たちが活躍した“もの派”とは68年、関根伸夫が第1回現代日本野外彫刻展に「位相ー大地」という作品の発表をもって始まったいわれる。その作品は地面に大きな穴を掘り、その残土であたかも穴からくりぬいたように同じ大きさの筒を横に築いた作品だった。
 つまりもの派とは自然石や木、ガラス、鉄や紙など素材そのものに手を加えず、組み合わせたり配置したりするだけで、なるべく「作らない」で「作った作品」に仕上げることで注目された。李氏の傑作は“余白の芸術”とも言われるように、大きなキャンバスに筆がすべったような色跡だけの絵や壁に立て掛けたガラス板とその前に置かれた大きな自然石など作品などである。それは、制作途中なのか、ただ置いてあるだけなのかよくわからない。
 それら作品を前に、これがアート?と人は惑わせられ難解だと言われる現代美術をさらに混乱させる。しかしじっくり作品と対峙すれば、見る人を冷たく突き放すその存在感の内側には深層海流のように大きな独創性がうねり流れていることに気づくのだ。
 もの派とはー今までの西洋美術やそれに多大な影響の受けた日本の美術界。それら作品が訴えるメッセージや世界観はあくまで作者が作り上げたイメージにすぎない。そのことを疑問視し批判することによってアートの行く末=本質が見つけられないか?ーという難しいテーマに取り組んだのだった。それは人間中心で繁栄してきた社会そのもの、それら価値観に痛烈な批判を加えていることでもある。
 作家の手の加えられていない、描かれていない“もの”にこそ“アート”の本質が隠されている、それを示唆し人間のこれから出会う未知の領域を探すための地図は、すでにずっと以前から“もの”に描かれている、作家たちはその入り口を示してやるだけなのだ、と。
 話が飛躍するかもしれないが今世界中で問題になっている温暖化現象。これは物を破壊し作り直す、スクラップ・アンド・ビルドによって発展してきた近代社会の負の遺産である。壊さず作らず、最小限に加工を抑えるやり方はこれからの我々の発展と繁栄の鍵になりそうだ。李氏たち“もの派”の作家たちはそんな現状を見通していたのだ。
 宇宙に広がる空虚。果てのない空間。そこにある“もの”ははたして漆黒の青なのであろうか?

[掲載写真]「照応 14」水彩 1993

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