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月刊誌ナイルス・ナイル
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ナイスルナイルはよりよいライフスタイルを提案するカルチャーファッション誌です。
世界的に活躍する日本人画家、彫刻家などのアーティストをピックアップ。
このコラムは2005年12月号より2007年9月号までに連載した記事と現在執筆のもの。
2007.3月号 NO.122 カバーフォト:Goda Masahiro ---------発行:ナイルスコミュニケーションズ
[登場アーティスト]
杉本博司(No.107 )
篠原有史男(No.108 )
黒田アキ(No.109)
荒川修作(No.110)
中島由夫(No.111)
安田侃(No.112)
小林孝宣(No.113)
外尾悦郎(No.114)
ジミー大西(No.115)
松山修平(No.116)
草間彌生(No.117)
村上隆(No.118)
森万里子(No.119)
奈良美智(No.120)
川俣正(No.121)
千住博(No.122)
新宮晋(No.123)
リー・ウー・ハン(No.124)
絹谷幸二(No.125)
横尾忠則(No.126)
大竹伸朗(No.128)
ヘルマン・ニッチェ(No.176)

日本画から世界画へ ー 千住博(せんじゅひろし)


 私事で恐縮だが、“ホルモン関根”と名乗ると必ず「ああ、焼肉がお好きなんですね」と言われる。
 すかさずこう答えるー「私の“ホルモン”はギリシャ語で“刺激する・駆り立てる”という意味の内分泌化学物質のホルモンなのです。ほんの僅かな量でも性別を決めたり身長を伸ばしたり人間の体を大きく変化させるようにアートも同様、私たちの思惟や感性、価値観を大きく変えると思って!」とその由来を説明する。
 そのホルモンは古代ギリシャ語のhormaoが語源で1849年ドイツのベルトールドが科学的に証明した。ホルモンは栄養とかではなく特定の器官で産生され血液中にほんの少し、例えると相模湖にスプーン一杯の水をたらしたくらいの量で作用する情報伝達物質なのだ。
 千住博。1958年東京生まれ。87年東京藝術大学後期博士課程修了。京都造形大学副学長。現在、日本とニューヨークのアトリエを行き来する国際的な“日本画家”である。
 95年現代美術の最高峰ともいわれるヴェネチア・ビエンナーレにおいてデビット・ホックニー、ビル・ビオラ、フランチェスコ・クレメンテという名だたる巨匠を押しのけ東洋人として初の快挙、優秀賞受賞。02年大徳寺聚光院別院襖絵、03年グランドハイアット東京の壁画制作から04年ウィーン国連本部、アメリカ大使館を手がけたシーザー・ペリ設計の羽田空港第二ターミナルのアートディレクターや著作活動まで多岐にわたりその才能を発揮している。
 千住の作品は壮大な未来への叙情詩だ。彼の出世作となった「フラットウォーター」と題された連作がある。ハワイ島キラウエア火山のすそ野に広がる荒涼とした溶岩台地を描いた作品で、大きなもので縦2m、横11mの大作だ。現地で“ワイカプーナ”つまりフラットウォーターと呼ぶその場所はまさに地球創世の神話そのものなのだ。巨大な画面にモノトーンに近い濃いブルーグレイの岩肌と白い水面だけが描かれ、荘厳な自然の畏怖を確かな描写力で再現している。日本画はとかく世界では理解されにくいと言われるが、彼の作品の根底に流れる神話性とモノの本質捉えた力強い表現力はいとも簡単に国境を越えてしまう。
 それを証明するかのように「フラットウォーター」シリーズは93年、ニューヨークのマックス・ウェル・デビッドソン画廊でデビュー。世界中からやってくるアート・ファン必携のニューヨーク・ギャラリー・ガイド誌の表紙に取り上げられたり、全米ネットのテレビで紹介されたりもする。
 その個展の成功が呼び込んだのであろうか、ヴェネチアビエンナーレ代表に選出される。その時のコミッショナー、伊藤順二氏は「フラットウォーター」での出品を考えていたらしい。しかし千住は着手し始めていた滝の絵を出品したいと伝える。
 なぜなら「フラットウォーター」で自分の日本画に対する限界を知り、さらなる向上心に“駆り立てられ”、研さんを積むなかで出会った先達たちの感性に突破口を見いだしたからだ。たとえば彼の著述にたびたび登場する“造化”や“花実相兼”という言葉がある。
 造化は芭蕉の極めだ。「笈の小文」の序に“造化にしたがひ、造化にかへれとなり”とある。造化とは自然万物を創造するもの、という老荘思想だが芭蕉は“その自然そのものに美を見いだせ”と諭している。“花実相兼”は紀貫之の言葉で、表現は技術と内容の一致があったときに完成とする、というのだ。
 結果、優秀賞を得ることになる「ザ・フォール」は、それらの言葉が示すように芸術家に脈々と受け継がれているDNAから必然的に産みだされた産物とは言えないだろうか?仮に「フラットウォーター」を出品していたならそのような栄冠を手にすることは、はたしてできたのであろうか?
 千住曰く「滝の絵には“わたし”という存在は消え、滝そのものしかなかった。この普遍性が日本画でありながら世界の人々に認められた所以ではなかろうか」と。
 有史以来、壮大な人類の歴史があり偉人たちの足跡が残されている。今を生きる私たちの記憶にも膨大な情報がひしめいている。その中の無尽蔵にある表現や言葉の中のたったひとつが、こうも作品に影響し万人に伝播させてしまうのだ。
 やっぱりアートはホルモンなのだ。
 話を最初にもどすが、「ちなみに焼肉の“ホルモン”は“放るもん”つまり“要らないもの”という関西弁が語源です。私がどちらのホルモンかは作品で決めてください」

参考資料:「ルノワールは無邪気に微笑む」朝日新書/2006、「絵の心The HEART OF THE PAINTINGS」世界文化社/2003、「美は時を越える」NHK出版/2003
[掲載写真]Senju Hiroshi "Tha Fall" 340x1260cm 1995

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