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月刊誌ナイルス・ナイル
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ナイスルナイルはよりよいライフスタイルを提案するカルチャーファッション誌です。
世界的に活躍する日本人画家、彫刻家などのアーティストをピックアップ。
このコラムは2005年12月号より2007年9月号までに連載した記事と現在執筆のもの。
2007.1月号 NO.120 カバーフォト:Masahiro Goda ---------発行:ナイルスコミュニケーションズ
[登場アーティスト]
杉本博司(No.107 )
篠原有史男(No.108 )
黒田アキ(No.109)
荒川修作(No.110)
中島由夫(No.111)
安田侃(No.112)
小林孝宣(No.113)
外尾悦郎(No.114)
ジミー大西(No.115)
松山修平(No.116)
草間彌生(No.117)
村上隆(No.118)
森万里子(No.119)
奈良美智(No.120)
川俣正(No.121)
千住博(No.122)
新宮晋(No.123)
リー・ウー・ハン(No.124)
絹谷幸二(No.125)
横尾忠則(No.126)
大竹伸朗(No.128)
ヘルマン・ニッチェ(No.176)

少女に託されたミーム ー 奈良美智(ならよしとも)


 20年ほど前に自分探しで悩んでいた頃、『利己的な遺伝子』("The Selfish Gene"1976)という本に出会った。いろいろと賛否両論があるのだが、著者であるイギリスの動物行動学者リチャード・ドーキンスは生物とは遺伝子を運ぶ乗り物にすぎない、と言い切った。自分はこの一言で暗く深い谷底から引き上げられた。人間なんてたかが乗り物にすぎないんだ、だからもっと気楽に生きよう!と。
 その本の中でもう一つとても印象に残った言葉を見つけた。ミームと呼ぶ文化的遺伝子論だ。つまりそれは細胞の中のDNAの遺伝子と同様、文化や芸術、個人の業績などをもうひとつの遺伝子(=ミーム)に仕立てあげ、子孫に受け継ぎ増やしている、という説だ。
 奈良美智。あの上目遣いの少女の絵で一躍有名になった現代美術家である。1959年青森県弘前市に生まれる。87年愛知県立芸術大学院修了。93年ドイツ国立デュッセルドルフ芸術アカデミー修了。2000年までケルンにアトリエを構える。
 同年シカゴ現代美術館、サンタモニカ美術館などでの個展、ボルドー現代美術館でのグループ展「推定無垢」展、01年「スーパー・フラット」展(ロサンゼルス現代美術館)、「I don't mind,If you forget me」( 横浜美術館ほか)、03年「Nothing Ever Happens」展(クリーヴランド現代美術館他アメリカ3ヶ所巡回)など世界的に活躍する。06年には生まれ故郷の弘前市でクリエイティブ・ユニットgrafとのコラボレーション「A to Z 」展を開催。これは仮設小屋を設置、会場中に奈良が展示するという巡業芝居風の展覧会である。また、絵画・彫刻以外にもCDジャケットや絵本の出版。吉本ばななの書籍装丁やコラボレーションなども話題を呼んだ。
 奈良の作品の特徴は何と言ってもあの少女や犬などのキャラクターたちだろう。背景はほとんど色一色でシンプルにまとめられ、画面中央に大きく描かれた三白眼でにらみつける少女。まるで人を見透かしているようなシニカルでクールな表情には強烈なインパクトがある。
 彼は学生時代にロックに傾倒していた。それもパンクロックを好んだという。現に少年ナイフや日本パンクロック界の草分け的存在スタークラブなどのCDジャケットに絵を提供している。
 ロックは社会に対するアンチテーゼと理解されることが多い。規律、権力に対する反動であり、何もない裸の自分を世の中に存在させようと試みる強烈な階級闘争でもある。奈良はそんなロックな心に通ずる、静謐だが熱い自己主張を少女たちに託しているとはいえないだろうか。
 世界のYOSHITOMO NARAまでに成功させた少女たちは90年に入ったころから登場し始める。当時奈良はドイツに住んでいたのだが、91年と言えば日本ではバブル崩壊。ヨーロッパでは93年に欧州連合(EU)発足となる。
 ミュージシャンやアーティストたちは世の中の歪みや矛盾を人より先に的確に感知する。それは得体のしれぬ危機感となりメッセージへと昇華し作品に埋め込まれていく。そしてそれらメッセージは共感を得て人から人へと伝播していく。
 つまり前フリで書いたミームがそれなのだ。そうやって今現在でも奈良美智のミームは少女に託され増殖し受け継がれている。そのミームが強ければ強いほど長い年月をすたれることなく残るのだ。ホメロスの叙事詩やギリシャ時代の彫刻のように、ダ・ヴィンチの絵のように、モーツァアルトの音楽のように。
 さて奈良美智のメッセージはどこまで増殖していくのであろうか? そんなことを考えている自分の表情が、ふと少女のようにシニカルになった気がした。途端、奈良美智の作品が絶大なる賛辞をもって大衆に受け入れられた理由がわかった!
 それは見る者がその表情に裸の自分を素直に重ねあわせることができるからだ。
参考資料:「BT美術手帖」2000年7月号、2001年12月号/美術出版社
[掲載写真] After the Acid Rain 2006 / acrylic on canvas / 227cm X 182cm ©2006 Yoshitomo Nara/ courtesy Stephen Friedman Gallery, London / To,io Koyama Gallery, Tokyo)

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