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月刊誌ナイルス・ナイル
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ナイスルナイルはよりよいライフスタイルを提案するカルチャーファッション誌です。
世界的に活躍する日本人画家、彫刻家などのアーティストをピックアップ。
このコラムは2005年12月号より2007年9月号までに連載した記事と現在執筆のもの。
2006.11月号 NO.118 カバーフォト:TONY---------発行:ナイルスコミュニケーションズ
[登場アーティスト]
杉本博司(No.107 )
篠原有史男(No.108 )
黒田アキ(No.109)
荒川修作(No.110)
中島由夫(No.111)
安田侃(No.112)
小林孝宣(No.113)
外尾悦郎(No.114)
ジミー大西(No.115)
松山修平(No.116)
草間彌生(No.117)
村上隆(No.118)
森万里子(No.119)
奈良美智(No.120)
川俣正(No.121)
千住博(No.122)
新宮晋(No.123)
リー・ウー・ハン(No.124)
絹谷幸二(No.125)
横尾忠則(No.126)
大竹伸朗(No.128)
ヘルマン・ニッチェ(No.176)

タブーとアート ー 森万里子(もりまりこ)


 よく外国人と会話をする時、宗教と政治の話題は避けたほうがよい、と言われる。また欧米人の女性に職業と年齢を聞くのはタブーである。
 タブー。語源はポリネシア語だそうだ。あのキャプテン・クックが旅行記に書きヨーロッパ社会に持ち込んだといわれている。つまり触れてはならないもの、禁忌のことである。現在、私たちの身辺にタブーはたくさんある。でもそれを書くことはタブーだからできない!
 では美術界ではどうだろう。ピクニックの昼食に裸婦が一人平然と微笑むマネの「草上の昼食」や娼婦をモデルにしたと非難された「オランピア」。現代美術家・大浦信行の天皇を主題とした版画シリーズ「遠近を抱えて」。イギリスの現代美術家ダミアン・ハーストの牛を輪切りにしてホルマリン漬けした作品。ピエロ・マンゾーニの自分の排泄物の缶詰めなど今までに数々の作品がタブーを破ったとして侃々諤々の議論を沸かせている。ちなみにダミアン・ハーストは現代美術家の中で作品がもっとも高値で取引される作家である。
 森万里子。1967年生まれ。文化服装学院でファッションを学んだ後、イギリスへ渡りチェルシー・スクール・オブ・アート卒業。ニューヨーク、ホイットニー美術館インデペンデント・スタディ・プログラムで学ぶ。ニューヨークにアトリエを構え92年頃より作品を発表。95年資生堂ギャラリーで日本初の個展「Made in Japan」を開催。その後、一気呵成に毎年のように発表。97年、47回ベネチア・ビエンナーレで優秀賞受賞。98年ロサンジェルス州立美術館、シカゴ現代美術館。その後もプラダ財団、ポンピドゥセンター、英国王立美術館、シドニービエンナーレ、東京都現代美術館で展覧会開催。01年には第8回日本文化芸術奨励賞受賞など世界で活躍する数少ない日本人現代美術家の一人だ。
 当初、森は村上隆と同様(作家の言い分は違うのだろうがここは一般論で、という意味)、サブカルチャー的キャラクターに自らが扮し渋谷や地下鉄などで撮影した写真作品を制作していた。
 その後、巫女や天女の姿に代り宗教的モチーフに変化する。それに対し雑誌インタビュー(「Gallery」2002.1)で「言葉にも表現してはいけないような、ある種タブーなことを作品の中で表現しているわけですから・・・」と自ら語っている。
 02年1月、東京都現代美術館で大規模な個展「ピュアランド」が開催された。そのなかでも話題を呼んだ直径10メートル、高さ5メートルにもおよぶ法隆寺夢殿を模した「ドリーム・テンプル」というもはや建築と呼ぶような作品が出品された。
 まさにフェノロサと共に岡倉天心が、タブーに畏れる僧侶たちの反対を押し切り扉を開いた夢殿の現代版とも言えようか。その正扉は液晶ガラス、他にもダイクロイック・ガラスや偏光ガラスなど最先端のガラス素材で作られたほとんど透明なそれは宗教を見事、アートに換骨奪胎させている。また個展オープン前日、森は自ら白装束の巫女に扮し「ピュリフィケーション(浄化)」と名打ったパフォーマンスをこの「ドリーム・テンプル」でも行っている。
 他にも天女が舞う「ニルヴァーナ」(涅槃)や修験道の中心地であり蟻の熊野詣で名高い熊野の秘境をモチーフにしたと思われるビデオインスタレーション作品「クマノ」。龍安寺石庭で有名な枯山水を模したインスタレーション「ガーデン・オブ・ピュリフィケーション」。観音菩薩のようなイメージの「バーニング・デザイアー」などなど。
 これが他の宗教、例えばイスラム教やキリスト教だったらタブーに触れた忌み嫌われたものとして発表出来なかったに違いない。神仏習合という仏教の仏も信仰されていた土着の神に組み込まれ祀られていたというのを見てもわかるとおり、日本は他国と比べ宗教に関してはおおらかな民ゆえに制作可能だったのだ。
 ガリレオが天動説のタブーを破り地動説を唱えローマ教皇から裁判にかけられたように真実は時として強い抵抗にあう。アートの分野も既成事実や伝統保守に傾くことは免れない。それにあえて挑戦し続けることは並大抵の努力ではかなわないだろう。逆に言えばそれが現代美術の最終テーマでもあり、もちろん森もあっけらかんとタブーに挑戦し続けているのだ。
 06年4月、久しぶり日本での個展で発表した「Tom Na H-iu(トムナフーリ)」(06.4.21〜6.3、SCAI THE BATHHOUSE)は古代ケルト信仰から発想を得た作品である。遺跡にあるスタンディング・ストーン(石柱)を模した高さ3mの巨大なガラスのモニュメントが、ノーベル賞受賞者小柴名誉教授の研究所で著名なスーパーカミオカンデとコンピュータで繋ぎ、ニュートリノをキャッチすると連動して光るという壮大な作品だった。
 そこで最先端科学と正反対の古代信仰をリンクさせた森万里子は、まさにあえて神と人間を仲介させるタブーを身にまとった巫女のような存在になったような気がした。
(参考資料:「BT美術手帖」2002.3号/美術出版社、「ギャラリー」2002.1/ギャラリーステーション)
[掲載写真] Mariko Mori Entropy of Love, 1998

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