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月刊誌ナイルス・ナイル
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ナイスルナイルはよりよいライフスタイルを提案するカルチャーファッション誌です。
世界的に活躍する日本人画家、彫刻家などのアーティストをピックアップ。
このコラムは2005年12月号より2007年9月号までに連載した記事と現在執筆のもの。
2006.6月号 NO.113 カバーフォト:TONY---------発行:ナイルスコミュニケーションズ
[登場アーティスト]
杉本博司(No.107 )
篠原有史男(No.108 )
黒田アキ(No.109)
荒川修作(No.110)
中島由夫(No.111)
安田侃(No.112)
小林孝宣(No.113)
外尾悦郎(No.114)
ジミー大西(No.115)
松山修平(No.116)
草間彌生(No.117)
村上隆(No.118)
森万里子(No.119)
奈良美智(No.120)
川俣正(No.121)
千住博(No.122)
新宮晋(No.123)
リー・ウー・ハン(No.124)
絹谷幸二(No.125)
横尾忠則(No.126)
大竹伸朗(No.128)
ヘルマン・ニッチェ(No.176)

タイの光 ー 小林孝亘(こばやしたかのぶ)

 初夏。突然の夕立のあと爽やかな大空にかかる虹。その七色の境目が微妙なグラデーションで揺らいでいる。
 周知のことだが、日本では虹が赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の7色に色別されている。ちなみに、フランス、イギリスでは藍を抜いた6色、ドイツでは5色、明暗2色に区別する地域もあるという。
 光は可視光線と言われる電磁波の一種で、虹は太陽の光が空気中にただよう水滴などに反射する際、波長の違いにより生じる。一番外側にかかる赤は波長が長く、内側の紫が一番波長が短い可視光線ということになる。
 海や空が青く、夕焼けは赤く見えることもこの波長の差によって起こっている。詳しいことは省くが、海面が青いのは波長の短い、つまり動きの激しい光の方が水など分子にぶつかりやすく反射する光の量が多いから青く見える。夕焼けは空気中のチリやホコリに波長の短い寒色系の光がぶつかり目に届くまでにより多く散乱してしまう結果、赤っぽく見える。
 また同様に北・南極に近づくほど青が映え、赤道に近づけば赤が鮮やかに見える。これは光が通過する空気の層の厚さが変わるために起こる。円柱を斜めに切ると直角に切ったところより楕円に長くなるよう、極に近ければそれだけ光が通過する距離がふえるため起こる(専門的に言うと、これらの現象には回折やレイリー散乱という法則などが関わっている)。南国の街には赤やオレンジなどの暖色系色がより鮮やかに映える。つまり北海道と沖縄では同じライターの炎の色も違って見えるのだ。
 前置きが長くなったが、今回紹介する小林孝宣氏は多くのアーティストがしのぎを削るニューヨークやパリではなく、現在、東南アジアのタイ・チェンマイとバンコク、東京にアトリエを構える異色の画家である。
 1960年東京生まれ。愛知県立芸術大学卒業後、96年文化庁芸術家在外研修員としてバンコクに滞在。また98年にはアートスコープ‘98 ガスコーニュ・ジャパニーズ・アート・スカラシップ派遣アーティストとしてフランスのロット・エ・ガロンヌに3ヶ月滞在。
 フランスよりタイの方が印象がよかったのか、99年にタイ・バンコクにアトリエを構える。個展やグループ展も数多く開催。またそれら作品は国際交流基金、タイ・シラパコーン大学、水戸芸術館、東京都現代美術館、大原美術館など多くの美術館にも収蔵され、将来を嘱望される画家の一人である。
 88年より「潜水艦」シリーズを制作。小さな公園の水飲み場や滑り台と並んでおもちゃのようなかわいい形の潜水艦がたたずみ、まばゆい光が降り注ぐ不思議な情景を描いた作品である。
 94年からは「日常生活」と題した連作を制作。ある公園の木陰やベンチ、また食器ののったテーブルやベッドなどをこれ以上省略したら何かわからなくなるほどシンプルに描き、それを独特のまばゆい光で包み込んでいる。
 96年からは「バンコク」、98年になると「ひかりのあるところへ」と題したシリーズに取りかかっている。どれもそのシンプルな構図と柔らかい光が存分に満ちている作風は健在だ。
 彼の絵画の特徴は、イタリアの静物画の巨匠、モランディのような熱い情念ではなく、また日本画のように静謐すぎない微妙なゆらぎを描き出す。幾重にもぬり込めらた絵の具の隙間から光のざわめきがこぼれ流れてくるような静けさである。レオナルド・ダ・ヴィンチが編み出したと言われるスフマートというぼかし技法を彷彿とさせるその輪郭は光の渦となって空気中に溶け出しそうだ。
 ただ88年の「潜水艦」シリーズではやや暗い色調だったものが年を経るにつれだんだんと明るく色鮮やかになってきている。この変化がタイという南国での制作が影響しているとは彼以外知る由もないが。
 最新作は「眠る人々」という連作だ。タイトル通り、その画面にはスヤスヤと寝ている人物の上半身や水着姿で横たわる人々が描かれ、一見プーケットかピピなどのリゾートビーチで午睡をしているようなとても至福に満ちた寝顔を見せている。その表情もさることながら画面全体に満ちている光が何とも言えず神々しく、自分の勝手な印象だが、仏陀の化身に思えてしまうほどなのだ。
 中世ヨーロッパでは神のみに光が与えられていた。ルネッサンスに時代が移ると人間を照らしだすようになる。現在はどうであろうか? 科学ではない本当の光が万遍なく我々に注がれているだろうか? 古今東西、画家が求め創りだす光とは七色でも電磁波でもなく、天上の光だと思うのは考え過ぎだろうか?!
 小林氏の描き出す光の世界がこれからどのような変化を遂げるのか、楽しみである。
※小林孝宣ホームページ http://www.mangost.gr.jp/kobayashi/index.html
[掲載写真]
1.「Swimming Pool」2005 油彩 91x116.7cm 写真提供:西村画廊 個人蔵

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